ゴッドネス・ティア
「僕も聞きたい!お母さん弾いて!!」


「ははは、アメリス殿はピアノが得意なのか。
是非聞きたいものだな」



レオナが爛々と輝く瞳で見上げると、背後のつるつる頭が興味を持ちながら言った。

アメリスは困ったように微笑むばかり。



「はいはーい!
俺音楽とかすっげぇ疎いけどアメリスのピアノ聞きたい!!」


「………クラウスさん跳ばないで下さい」



負けじとぴょんこぴょんこと跳ねながら挙手するクラウスに、呆れたように言い放つリア。

いい年した大人が恥ずかしい、とでも言いたげだ。


だが、そんな彼も内心はとても聞きたい聞きたいと念仏のように唱えているわけで、クラウスのことはあまり言えない。



「…………そんなに聞きたいの?」


「…………え?」



困ったように微笑むアメリスが複雑そうに眉を寄せた。

まるでそれを拒むように。


だが、その変化に気付いたのは息子であるレオナだけで、まわりの大人共 は顔に笑顔を貼付けてうんうんと力強く頷いていた。



「じゃあ…、そのかわり………」



困ったような微笑みからまたあの少女のような微笑みがレオナを向いた。

だが、今回はいつもと少し違う………悪戯っ子のように口元に弧を描いたような……何か意味がありそうな笑み。


………一瞬嫌な予感が。















「レオナも一緒に弾きましょ♪」




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