ゴッドネス・ティア
「しょーがないっすよクリス先輩。ジャンナ先輩はどーせそんな奴ですから、何を望もうと無駄です、無駄無駄」


「………おいルカ、表出ろ」


「ジャンナ怒ったら駄目アル!白髪増えるヨ!!」


「テメェも表出ろぉおッ!!」


「あ、立ち上がったね。そのまま姿勢よく座ってなさいジャンナ」


「うるさいクリス!!」



約四名の男女の言い合い。

ほとんどは元凶であるジャンナが中心なのだが、煽る方も煽る方だ。



会議中だというのに全く緊張感のない空気を四人が作り出しているところに……一瞬ピシリと亀裂が入ったような気がした。

音ではない。雰囲気に嫌な嫌な……今にも崩れるのではなかろうかと思うような…亀裂が。


その亀裂に素早く気付いた四人組はハッと顔を上げ、一瞬にしてソファに座り直した。





………そして、数秒もかからないうちに今では姿勢よく座っているジャンナの耳元で風を切る音が。

ソファに鈍い振動が伝わってくる。



チラリと震源地を見れば、………羽ペンらしきものが背もたれに深く深くくい込んでいる。


一瞬にしてジャンナの体温は急降下した。











「うるさい」



一言。たった一言にある一人の人物の感情が全てあらわれている。

その表情は明らかに柔らかではなく、いつも以上に眉間のシワが深くなっていた。


足を組み、片手に書類を持った楽な体制。視線は書類へまっしぐら。

……そんな彼女のもう片手におさまっていただろう羽ペンが一番離れた席のジャンナのソファに刺さっている。




「……………ナミ…」


「うるさいジャンナ。今は会議中、静かに。シー・チェンもルカもクリスも黙って」


「…………わかった」



先程まででかい態度だったジャンナが額に汗を浮かべ、小さくなっていた。


他三人も気まずそうに顔を伏せる。



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