ゴッドネス・ティア
―――ヒューッ
ざわざわと草木がざわめく。
それと共に………一際葉が茂っている大木の影が揺れた。
その影に混じって……葉ではない形をした物が太い枝の上で足をプラプラと動かした。
「んーやっぱり。間違いなく涙の石はあそこだなあ…」
プラプラと揺らす足を枝にかけ、枝の上で胡座をかく。
懐から掌サイズの手帳とペンを取り出し、さらさらと何かを書き留めた。
楽しそうに手を動かしながら、口笛を一つ。
ビュッと一際強い風が吹くが、バランスを崩しもせず、ただその赤茶の短い髪が靡いた。
書き留め終わると、手帳とペンを大事そうに懐に戻す。
そして……、前を見据えた。
三つの影が見える。
その一番大きな影の元をその深い海のような瞳に映した。
「………あんなに楽しそうにしちゃって…。ベル嬢安心するぜ」
クスクスと嫌らしいような無邪気なような笑みを浮かべて、…どんどんと先を行く三人組を眺めた。
そののんびりとした口調に、少しばかりの緊張感がある。
「……さってと…」
不安定な枝の上でピョンッと跳び、見事上体を起こした。
あまりにも軽い身のこなし。風にでも飛ばされるのではないだろうか。
また風が吹き、耳たぶからぶら下がるピアスと薄地の茶色いマフラーが揺れた。
しっかりとバランスをとり、首にぶら下げていたミニサイズの双眼鏡を取り出し、……例の三人組を覗く。
目的の人物をとらえると、ニヤリと笑みを浮かべた。
「……………坊ちゃん、お久しぶりでござーい…」