ゴッドネス・ティア
ぐるぐると黙ってベッドの周りを二回程回ったころ、そろそろレオナの背中には嫌な汗が。

とても気まずい空気だが何故か堪えなければならないような気がして、圧迫感に苛まれながらも黙ってサロナに観賞されている。


ピタリ、とある位置でサロナが止まった。

レオナの真横で、今度は睨むような目付きでじろじろと眺める。


……なんだこの緊張感。


ピリピリと張り詰めた空気。
誰も口を開かないせいか、壁にある小さな窓から風の音が聞こえた。
今日は少し風が強いようだ。

少しでも現実逃避をしたいためか、レオナの思考はいつのまにか風の方へいってしまったらしく、サロナのことなど見ていない、いや見たくないだけかもしれないが。

だから気付かなかった。

彼女は軽いから、ベッドの軋みなんか聞こえなくて。


……サロナがベッドに乗り込んで来たことなんて思ってもいなかった。







「…………ねえ」



痛い程の沈黙にポツリ。
少女の、だが妖艶な響きを持つ麗しい声が、風の音を聴き入っているはずのレオナの耳に入った。


突然の響きに目を見開き、いつのまにか目の前にある端正な少女の顔を瞳に映す。


……なんと、少女もといサロナが、俯せになって寝転んでいるレオナに覆いかぶさるようにそこにいるではないか。



当然驚いたのはレオナだけではなく、
ヒサノは怒りか恨みか悲しみかよくわからない感情が入り交じった顔で拳を作っており、
スノーリアは据わった目でなんの感情も篭っていないような無表情でその光景を眺め、
ジョージなんかはその端正な顔立ちを歪めに歪めて、顎が外れるんじゃないかってくらいあんぐりと大口を開いていた。
せっかくの美形が残念だ、ジョージ・ブラウン。



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