ゴッドネス・ティア
五人が崖から真っ逆さまに落ちて行く。
原因は……ドジっ娘ル・メイ嬢。


落ちる間際、手近にあった華蓮の腕を引っつかみ、華蓮はル・メイの体重に逆らおうと申し訳ないが先輩であるリュンマのマントを握り、何故かリュンマは楽しそうにノリノリで香月の胴体を抱きしめ、三人の体重に耐え切れるはずもない香月は、情けない雄叫びをあげながら風が吹き抜けるパックリと口を開いた崖へと落ちるしかない。

ちなみに香月が掴み損ねたシャランは、自ら崖にダイブ。

何故だ。






崖の底は森に覆われ、はたしてどのくらいの深さなのか、それより底があるのかさえわからない。


遥か下にある、だがもうすぐ突入してしまうだろう緑の塊へ、国王騎士達は情けない悲鳴をあげながら抗うことも出来ず、………落ちて行く。


服の間から風が入り込み、バタバタと騒がしく羽ばたかせながら、髪を……女の子には少し抵抗のあるオールバックにされながら落ちて行く。






…………落ちて、行く。




















落ちてたまるものか…！




そこは経験豊富の国王騎士達。

崖から落ちるのは日常茶飯事………というわけでもないが、このような困難はいくつも乗り越えてきている。


五人は我が身を守るため、独自の処置をとりはじめた。










ル・メイは叫びながらも瞬時に懐に手を忍び込ませ、隠しポケットから掌サイズの短剣を取り出した。

小さいが……役には立つだろう。


足を全て覆わない、太腿の半分の長さのズボン。
そのズボンにいくつも設置してあるポケットにも指を滑り込ませ、今度は少し太めの……猛獣の牙のようなものを取り出した。


まわりの国王騎士達とは少しことなるこの身軽な団服。

国王騎士が所属している軍事機関内の専門家が、国王騎士達全員のために作ってくれた団服。


一人一人僅かだが違いがあり、それは国王騎士達の戦闘スタイルや、好みに合わせた、しかし少しでも国王騎士達の身を守るために頑丈に作られたシンプル且つ丈夫な物だ。



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