ゴッドネス・ティア
混乱する頭をなるべく冷静に回転させ、素早く体を捻り、猛スピードで落下しながらも岩の壁に向き直った。


両手に持った二つの武器を振りかざし、……ごつごつとした岩壁に突き刺した。



「―――…くっ…!」



ガリガリ、と少しでも落下のショックを和らげようと、岩壁を裂きながら落下した。


武器支える腕が、……骨の一本や二本折れるだろうがそこは覚悟の上だ。


みしみしと骨が軋むのを感じながら、あまりスピードが落ちたようにも感じられない落下速度にとにかく堪える。



他の者達も同じようにしているのだろう。

馬鹿らしくも見えるが、これでまずスピードを落とさなければ……。











だからといって、落下を防げるわけではなく、五人は岩壁を滑るように落ちてく。

両手にしっかりと握っている武器が、たいして深くもない傷をつける。
それと次いで細かい砂か石のような物がパラパラと散っていた。










……深い緑の木々との距離が狭まっていている。

このまま突っ込めば五人もろとも枝や葉に巻き込まれ、最後には……。





………考えるのはよそう。





























こんな危機的状況の真っ只中でもリーダーは冷静だった。


武器を持つ手を緩めず、自分以外の団員達の状況を把握した。

……皆、やはり同じような処置をとっている。


もう目前に迫る木々の大群にも目配せして、落ち着いた溜息をついた。

……緊張感はあるのか。










―――…そろそろか。



四人を見渡すと、皆自分が動くのを待っているように見えた。

助けを求めるような…、脅迫するような……鋭い八つの眼光のが香月に集中している。

















「…ったく、仕方ないな…」


壁に軽く足をかけ、次の瞬間には壁を蹴りあげ、何もない空中へと身を放り出した。

普通ならこれは自殺行為だ。
空中へ身を投げるなど、身を守る術でもないと出来ることではない。


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