ゴッドネス・ティア
……………痛い。
だが痛みがあるのは生きている証拠。
危機を免れた華蓮とル・メイは同時に安堵の息をついた。
目の前に広がるのは、鬱蒼とした木々………と、その枝や頭上から垂れる白い大群。
よく目を凝らせば、それは……白い布だった。
一本の長い長い布が木々の間を擦り抜けたり絡まったりしてそこに垂れている。
そしてまた、自分達……華蓮とル・メイの体を支えていたのも……まるでハンモックのように木々の間を往復して何重にもなっている……白い布。
「……うっはー助かった。やっぱり香月さんはスゲェや。『伸白布』をかなり使いこなせてんなー………」
「……うん、あたし本当に死ぬかと思ったー…!」
目の前に広がる白い布の群れ、……言わば伸びる白い一本の布。それが『伸白布』。
紅和州に伝わる世界に二つしかない秘伝の武器である。
あるときは攻撃に、またあるときは防御に、と幅広く使われるそれは、簡単そうに見えて実はかなり扱いづらい物。
そして、それを扱うのを許されるのも……世界にただ二人である。
「……かーーーっ!カッコイイぜ!!さすが香月さんだな!ル・メイなんてミジンコより小さく見えるぜ!」
「…な、なんであたし!?華蓮ちゃんもでしょ!!」
「うるせーやい。……そういえば、もう一つの『伸白布』を使えるのって陽深だよな?あいつ本当に使えるのか?あのひょろひょろで」
「そんな事言ったらかわいそうでしょ…!………………ひょろひょろだけど」
危機から脱した安心感からか、二人はハンモック状態になっている伸白布の上で寝そべりながら雑談を始めた。
大丈夫なのか国王騎士。