ゴッドネス・ティア
………だが、雑談しているのもつかの間。
二人に魔の手が忍び寄っていた。
それに気付かず、ル・メイがふと体を起こすと………………
――さわっ…
……それは震源地である下半身から背中へ、そして首筋から脳のてっぺんまでの……悪寒。
今まで味わった事のない気味の悪い悪寒に恐ろしい程顔をしかめたル・メイは、磨きに磨きあげられた反射神経で……背後の気配に蹴りを浴びせた。
「―――ぐはぁッ!!」
手応え……いや足応えがあった。
素早い回し蹴りを受け、痛々しい悲鳴をあげた当人は……いつのまにそこにいたのか、白いハンモックから転げ落ちた。
たった一瞬の出来事に、あまり状況を把握できていない華蓮は元々大きなその目をぱちくりと瞬かせる。
震える拳を握り締めるル・メイを不思議そうに眺めた後、「いってー…」とぼやくハンモック下の正体不明の人物を覗き込んだ。
だが、その人物を瞳に映す寸前に……恐ろしく怒りに満ちているル・メイの罵声が響いた。
「………この…痴漢!!痴漢痴漢痴漢痴漢痴漢痴漢ーー!!
ダメだよ華蓮ちゃん避難して!奴は痴漢という汚らしい生物よ!いつどこで襲われるか…気を抜いたら痴漢に何されるか…わ、わかんないんだからーーー!!」
………どうしたことやら…、ル・メイはパニック状態だ。
きっと自分が何を口走っているのか分かっていないだろう早口で、華蓮の背中にそれを浴びせた。
「痴漢痴漢って……失礼だなお嬢ちゃん。君が俺の上に落ちて来て、俺を下敷きにして、掌にお尻を乗っけて来たんだろー?そんなサービスみたいな体制で自重しろっていう方が無理だと思いますー。それになかなかの弾力で……」
「嫌ー!そういう話嫌ー!耐え切れない!」