ゴッドネス・ティア
風が吹き、草木が唸り、頬を撫でた。
風は丘を下り、目下に広がる広大な大地を踊るように滑って行った。
頭一つ分くらいの大きなの石に右足を投げ置いて、体重を預けながら丘の下を覗き込むように見下ろした。
草木が広がる大地、母なる大地の上を風が踊る。
それを見下げるあたし。
彼女………ナミ・ダコスは、広大な大地を見渡せる唯一の場所である丘で不敵な笑みを見せた。
「………妙な優越感に浸れな…」
また風が踊り出て、彼女の髪と頬を撫でた。
二つに括った腰まである長い桃色の髪が、空気に溶け込むように靡いた。
そしてまた丘を下り、それを見下げる。
………全てが我が下にいるようだ…。
全てが…自分を見上げているように感じる。
………ついにこの日がやってきたのだ。
あたしが……見下す日が。
ナミが黄昏れる大地を見下ろしている背後では、会議が行われていた。
ふさふさと覆い繁る柔らかい草原に腰を下ろし、何か一つ一つ違う資料のような物を皆で交換しながら、意見を述べる。
資料には人物の写真が一枚ずつ丁寧にクリップで挟まれていた。
「ふーん…これがエルフの国王騎士ねえ…。………まあ女性は綺麗だね」
「……何か私達が馬鹿にされているように聞こえるのだけど…」
「気を落とすなリゼッテ。クリスはそういう奴だ。…………あ、これはは男騎士のリーダーか?………まるで女じゃねえか」
「……うちの無口な厳ついリーダーとは大違いだな」
「…………………」
「あ、ラルフが興味持ってる」
「ラルフ先輩喋りましょーよ、……険しい顔付きしても何が言いたいのかわかんないっすよ」
「ハハハッ、ラルフの無口は昔から変わりませんよルカ!」
「ちょっと、ハーウェイうるさいアル!!」
………ただの雑談のような気がするが。