ゴッドネス・ティア
ただ、何となく質問してみたのだが、………答えはなかなか返ってこなかった。

リンはといえば、相変わらず足を行儀悪く投げ出したままぼんやりと空を見遣っている。


再び尋ねるのも気が引けるのでとりあえず黙っておく。


………沈黙が続いた。
















「…………知りたい?」



しばらくして返ってきた言葉。
小さく笑みを浮かべるリンは…なんだかいつもと違うように見えた。


……なんだろう。

いつものふざけた感じが抜けたのだろうか。




不思議に思いながらも、レオナは頷いた。




















「……アタシさー、本当はクラット州に働きに出てたんだけどさ。…ちょっといろいろあったわけよ…。そしたらまたいろいろあって何かいろいろとまたあって何故かリリオ国に来たわけー。んでなんかまたいろいろあって何か踊り娘になっちまってー。……今に至るという」




















「…………」


なんだいろいろって。
おおざっぱ過ぎだろ。


ただ説明するほどの頭がないのか、わざとそうしているのか……。


――……それとも…






(……あ、やっべ)



















―――聞かれたくなかったとか…。





リンに限ってそんな繊細に思考は持ち合わせていないと思っていたが……、彼女も一応女性なわけで。




……別にリンは何も言っていないのだが、レオナは悶々とまたいろいろと考え出した。






















「……とりあえずごめんなさい」


「…………は?」



別に落ち込んでいるわけでもないリンは、目の前で何故か深く頭を下げる少年を見て、思わず声が漏れた。

意味が分からずしばらく黙っていたが、……だんだんと今の状況が面白く思えて来た。




いつの間にか声を押し殺しながら腹を抱えて笑いを堪える自分がいた。




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