ゴッドネス・ティア
相変わらず月を眺めて動く気配のないリンを見遣る。


……このまま放置するか。

それとも、どうにか説得して就寝してもらうか。
















「…………リン」


「嫌だ」


「…………俺まだ何も言ってねーんだけど」


「どうせ寝ろって言うんでしょ。アタシは月を眺めていたいの。アタシのことは放っておきな」











聞く耳持たず、だ。

何故そんなに寝るのが嫌なのだ。

何をそんなにこだわることがあるのか。

何故三日も眠らない必要があるのか。



……聞いても答えてくれなさそうなので口にはしないが。







相変わらずリンはレオナを見ようともせず、視線は窓の外。

………本当に寝る気など微塵もないようだ。





ちらり、と月明かりに照らされるリンに目配せをして、考えた。
















(…………こうなれば強制就寝だ)



思い付いた後、沈黙を保つ物静かなリンに一つの鋭い眼光が向いた。

その尋常じゃない、変な雰囲気を揺るぎ出す眼光に直ぐさま気付いたリンは、苦笑いを浮かべて振り向いた。






目の前には、恐ろしく悪戯な笑みを浮かべた少年レオナ。

いつの間に立ち上がったのか、リンを見下ろしている。




………なんだか嫌な予感がするようなしないような気がするリンは不快そうに顔をしかめた。



















「………強制就寝っ!!」



レオナがそう叫んだ後に、リンは意外に力強いレオナに片腕を掴まれた。

突然の事に目を見開き腕を振り払おうかと思ったが、更にだらし無くその辺りに投げ出していた足を担がれた。



レオナってこんな力あったっけ…?なんて意外にも冷静に考えを巡らせていると、……なんだか嫌な浮遊感に襲われた。

その直後に、柔らかいような固いようなベッドに顔から突っ込んだ。地味に痛い。


もしかして、アタシはレオナなんかにベッドに投げ捨てられたのだろうか。そんなまさか。



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