ゴッドネス・ティア
はっきり言ってナメていた。少年レオナを。

そんなレオナにベッドに放り投げられたのだ。

『屈辱』という二文字の言葉がリンの頭を駆け巡る。
ベッドのシーツを震える拳で握りしめた。

何か文句を言ってやろうとベッドから起き上がろうとした。だが、その前に少し重みのある柔らかい物を乱暴に掛けられた。



「いいから寝ろ!言っとくけどおまえに拒否権はないからな!何でそんなに寝たくないのかは知らねえけど大人しくベッドの上で寝転がってりゃいつの間にか寝られんだよ。とりあえず寝ろ今すぐ寝ろ」


掛けられた毛布の上から、必死なんだろうレオナの声が降って来た。

リンから言えば、何故そんなに寝てほしいんだろう。と思ってしまうのだが、彼はどうもお節介らしい。
一気に喋ったのか、頭上から息を整える音がする。





……なんだか、楽しくなってきた。


毛布に埋めた中で、リンはにんまりと笑みを深めた。









「わかった。寝る」

「………お、何だ。急に聞き分けがよくなったな」

「うっふふー…」


すんなりとリンが頷いたのが意外だったのか、拍子抜けしたような声が聞こえた。

よかったよかった一安心だなー、と少し疲れ気味な感想を述べるレオナを毛布の隙間から見遣り、また笑みを深くした。

リンの腕が毛布の間を摺り抜け、程よい形のレオナの腕をそっと掴んだ。


「…………………?」


そっと掴んだはずのリンだが、レオナの腕をしっかりと握って離さない。

不思議に思って小さく苦笑いを浮かべてみると、頭まですっぽりと被っていた毛布がリンの頭から滑り落ちた。

現れたのは、豊かな柔らかそうな淡い桃色と、大人の色気を含む調度良い厚さの唇。

そして…月明かりに照らされ、はっきりと見える……妖艶な女性の顔。


「……そのかわりー」

「…………うわっ…!」


急に、ぐいっと腕を引っ張られた。
リンと入れ代わるようにしてベッドに仰向けに滑り込む。

女の唇が恐ろしい程美しく弧を描いた。
それに魅せられ、動くことは出来ない。

その唇が小さく動いた。

















「一緒に寝ようよ」




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