ゴッドネス・ティア
恐ろしい言葉を目の前の悪魔は吐いた。勝ち誇ったような笑みを浮かべて、まるでレオナを見下すように。
闇の中で見るためか、その笑みは一層歪んで見えた。

この女、ナメてやがる。
相当、少年レオナを侮っている。

少年レオナの腹の底から、何か言い難い沸々とした物が込み上げて来た。

まるで、沸騰する前に少しずつぷくぷくと鍋に浮かび上がる水滴みたいに。


もう抵抗して来ないレオナに気を緩めたのか、リンは掴んでいたレオナの片手を離し、シャツに手を滑り込ませ始めた。

なんだかもう、悪寒とか不快感とか、どうでもよかった。

ただ、沸騰する前のような感覚が、レオナの中で渦巻いていた。

……一瞬、目の前のリンを睨むように見据えて、






警戒を完全に解かしたリンの手を、掴んだ。

当然リンは目を見開き、レオナを押し戻そうとするが、レオナの方が速かった。






一瞬、世界が回った。





「うっ……わぁ…っ!」


上にいたはずのリンの髪が暗闇の空間に少し靡き、……ベッドの上に広がった。

世界は回った。レオナの手によって。

勢いのせいかいつのまにかつむっていた目を、ゆっくりと開いた。

目の前には、……先程まで自分が見下ろしていた相手が。


「……逆転成功ー」


やる気なさ気な声が、降って来た。
レオナは得意げに薄く笑みを浮かべている。

思いがけない展開に、リンは笑みを浮かべる事も忘れていた。



……つまり、先程と立場が逆転した事になる。

先程とは打って変わり、リンの上にレオナが馬乗りになっている状態だ。

さすがの彼女も驚いているのか、目をぱちくりと瞬かせ、……少なからず焦りの表情が伺えた。

こんな予定じゃなかった。とでも言いたげに唇をぱくぱくさせ、嫌々と小さく首を振った。



「じょ、冗談よねー…?」


きっと上手く笑えていないが、笑顔で、レオナのご機嫌をとるように首を傾げてみた。

当のレオナのいえば、それはそれは悪人の面目も立たなくなりそうな程恐ろしい笑みを浮かべて、



















「まあ、そのうちわかるんじゃない?」


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