ゴッドネス・ティア
一瞬、リンの顔が強張った気がした。

見るからに、だんだんと青くなっていっている。


珍しい。あのリンがここまで焦るなんて。

いつも会話で危ないことや下品な事を口走っていた彼女の意外な顔。

………これは面白い。



申し訳ないが、今まで散々リンに色々と可愛がられてきたので、見下す気分となった今の状態が堪らなく楽しい。実に楽しい。


しかもなかなかの反応。別にレオナ自身に変な方向の趣味があるわけではないが、これは面白く感じた。


ぐいぐいとレオナを押し退けようと押してくるが、有利な体制になったため今回はびくともしない。

ざまーみろ、リンめ。


心の中で鼻で笑ってやると、更に笑みを深めた。

たったそれだけのことなのに、……意外にもリンは小動物みたいにびくついた。





「………おまえ、もしかして受け苦手?」


もしやと思って尋ねてみると、リンはぷいとそっぽを向いた。

………図星か。



「もういいからさ、どいてよ。アタシはもう寝るから」



勝手にふて腐れたリン。
顔を背けたまま枕に顔を埋めた。

レオナが見下ろせば、人間特有の丸みのある耳が髪の間から覗いているのが見えた。

いつも付けている長い貝殻のピアスは外しているのか、いつもの耳たぶになかった。



「…んだよ。テメェ自分の都合が悪くなったら逃げんのか?ああ?」


「おやすみー」



………自分が不利な体制にあるにも関わらず、いや不利だからかもしれないが、枕に顔を埋めたまま寝る体制に入った。

レオナとしては、釈然としない。何か腹立つ。


むーっと顔をしかめたレオナ。そして、なにか悪戯を思い付いた子供のような笑みを浮かべた。

すでに寝る体制に入ってしまったリンに顔を近づけ、……その耳に舌を這わせた。


仕返し。そうレオナは先程の仕返しをしているのだ。

リンも気付いているだろうが、……無反応だ。



……面白くない。

別にこんなことをして楽しい訳ではないのだが。



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