ゴッドネス・ティア
だが、このまま放置しておいても彼女は無理矢理眠らないような気がする。

意地でも寝ないつもりのようだ。


レオナはまたもや深い溜息をついて、ゆっくりと今にも眠りに落ちそうなリンに近付いた。

ゆっくりと上げるリン。彼女からは調度光の加減のせいかレオナの顔が見えなかった。








「…どうしたら寝てくれる?」


ほら来た、お節介。
先程まで放置を決めて自室へ帰ろうとしていたくせに。

何故か笑いが込み上げて来て、リンは口を覆った。



「……じゃあ、一緒に寝て」


「………それは無理」


「……なんで」


「無理な物は無理。それが嫌ならマジで帰る」


「嫌だ。……一緒に寝てくれないと寝ない」


「………」






(……なんて我が儘なんだこの糞女っ!)

レオナは胸の奥で悪態をついた。
いつまでもこの糞女の我が儘に構っていられない。



「…じゃあ仕方ねぇな。俺は帰る」


「え、ちょ、駄目だってっ!!」


「駄目じゃねぇし……、うぉおっ!!?」



本当に自室へ向かおうと踵を返そうとした時、またもやあの怪力に腰を掴まれた。

掴まれたというか、……ベッドに放られた。



「テメェッ!……この、糞女!!」




何故だレオナ・オラトーレ。何故学習しないのだ。
ベッドに放られるのは今夜で二度目だ。

しかし今回は遊ぶ訳にはいかない。
リンに遊ばれるのは懲り懲りだ。


女とは思えない力で羽交い締めにされるが、今回は本気の本気で抵抗する。
それが、なかなか離れてくれない。
せめて腰に回る腕でも離せられたら良いのだが……。


とうとう躍起になり、いっそその華奢だが力強い腕に噛み付いてやろうかと思った。



「………レオナ……ア、タシ…」



じたばたと体をばたつかせていたが、……か細い吐息に近いような声が耳元で空気を震わせ、動きを止めてしまった。

その声があまりにも弱々しいから。

























「………アタシ……暗いところ駄目なんだ…」



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