ゴッドネス・ティア
やっぱり、あの裏の読めない微笑みを浮かべて……クレストはゆっくりと踵を返して、………闇に消えた。

ぼんやりとした人影は、魔女の村の方向へ闇に溶け込んで行った。

















「……どうしたの。あんなの、ル・メイらしくもない…」


消えた人影を、ベランダに転がったまま放心状態で見つめ続けるル・メイ。

そんな彼女を、不安げに見下ろすリュンマは心配そうに声をかけた。

香月も同意するように深く頷く。




「……クレストは…、……彼は……きっと…」


わななく唇を、また震える指で押さえながら、もう闇に消えたはずの彼を見つめていた。

その表情は……焦り、迷い、……恐怖。



「……ル・メイ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。クレストもただからかっただけだろうし…。……大丈夫、ル・メイのこと……知ってるわけじゃないと思うから…」


先程、酷く平手打ちをかましてしまったル・メイの頬に優しく触れ、まるでル・メイを安心させるかのように微笑んでいた。

だが、そんなリュンマに視線も移さず、小さく首を振った。



「…………違う。…クレストは、いつも探るような目をしてくる。そして今回も……あたしの内面を……弱い心を見透かすように……核心を突いてきた。……彼は知ってる。何故かは解らないけど、絶対…あたしのことを……」


そう、彼は、クレストは…その裏の読めない表情と目で、真っ直ぐこちらを見てくる。

探るように……見透かすように…、まるで全てを知っているかのように。

けれど、自分のことは上手く相手にわからないように仕向ける。

そういえば……彼の姓名、歳、何処の者なのか、……全くわからない。

謎だ。彼は、謎という物が服を着て歩いているようなものだ。














「………彼は……クレストは……一体、…何者なの…?」
































「……ル・メイは相変わらずだな…。弱ぇ、内面的にクソ弱ぇ」

「…そうですね。私も華蓮さんも人の事は言えませんが」




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