ゴッドネス・ティア
「あんたの番だぜ」



やり遂げて満足そうな笑みを浮かべながらこちらに帰ってくる。

だが、アランを見ると笑みを消して顔をしかめた。



「おまえ、矢、持ってねぇじゃねぇか。
矢がなきゃうてないぜ」

「矢なんて必要ないよ。」



そう答えると、アランはこのピリピリと張り詰めた空気と真逆にやんわりと優しく微笑み、線のところまで走っていった。


弓を肩からおろし、構える。



「僕の弓は特別なんだ」



誰にも聞こえない程の声で呟き、愛しそうに弓を撫でる。


すると、取っ手の所に光るものが見えた。


よく見るとルビーのように赤い宝石が取っ手に埋め込まれている。


あれはなんだ…………?


レオナはゴクリと唾を飲み込んだ。


アランは赤い宝石を優しく撫で、心決めたのか弓を構え、的である枯れ木を睨む。


それと同時に宝石が光った。


眩しくはない。


白く、優しく、暖かい…そんな光だ。


アランはそれを確認すると指を滑らせるように宝石から離し、無いはずの矢を引いた。


無いはずの矢をレオナやピート達は目を見開いて見つめている。



「ひ、光の矢…?」



ピートが驚きで口を開く。


そう、無いはずの矢は先程宝石に燈っていた光だった。


つまり、光の矢である。


辺りが息をのむ。


アランは触れられるはずのない光を矢を狙いを定め、枯れ木に放った。


皆が刺さる瞬間を見ようと矢を目で追うが、気付いたときにはもう矢は枯れ木に刺さっていた。


と、思ったが光の矢はすぐに消え去ってしまう。


的である枯れ木には光の矢が刺さった後の深い穴しか残っていない。


全く…見えなかった…。


あれが人に刺さったら…と思うと考えるだけでゾっとする。



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