ゴッドネス・ティア
パッチリ。自分の目がそんな効果音を起てて開いたのがわかった。

だが、その瞳に映った赤茶色は、誰の物が解らなかった。

というより、……そんなことを考えている場合ではなかった。





なぜなら、乾いた唇を誰かが塞いでいるのだから。

















「…………ふ、んーっ…!」



しばらく、魂か何かが飛んでいたみたいだ。

唇が角度を変えた。
我に返ったヒサノは、顔を思い切りしかめベッドに転がっていた両手で抵抗を始めた。


しかし、女の力ではびくともしなかった。

というか、何故寝起きの自分が今このような状況に陥っているのだろうか。

何故いきなりこのようなことをされなければいけないのだろう。











「んーッ!…んーんー!」





力では敵わないので、頭を振って唇を離そうとするが、しっかりと固定されているみたいでこれまたびくともしない。


なんという力だ。
固定するために添えられた手のせいで頭が締め付けられるように痛い。


抵抗していた両手も、頭の痛みを察知し、添えられた両手を引きはがそうと必死になっていた。


(………誰か…!助けて……!)



怖い。誰か。

そう心は叫んでも誰も来てはくれない。











「ぅ…、…ふぇっ………!!?」


ゆっくりと角度を変えていた唇が、更に深くなった。

すると突然、唇の間から異物が入りこんだ。

生暖かいそれは口内で動き回り、歯の裏を撫で、相手の物と絡ませようとする。






息も吸えないから、苦しい。


訳も解らず涙が流れた。



「……ぅ……えっ…ん…」


流れ出したら止まらない。

きっと素晴らしく不細工だろうが、もう関係ない。


自分の上に覆いかぶさっている者が誰であろうがもう知らない。

いいから、早く終われ。


















絶体絶命。

だと思った瞬間、ヒサノの脳は閃いた。


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