ゴッドネス・ティア
誰の部屋だったろうか。


薄暗く、殺風景な部屋。












………ベッドの上に広がる桃色が見えた。



女性のわりに普通の男よりでかい彼女。寝相が悪いのか、うんと足をベッドの下に投げ下ろしている。



………リンの部屋だ。

自分の部屋の隣がリンだったとは知らなかった。

つい最近までレオナの看病に付きっきりで、サロナの準備してくれた部屋に戻らなかったので知らなかった。



今では、あまり気に入らないはずの彼女が……救いの女神に見える。

直接彼女に助けてもらったわけではないのだが、……彼女の綺麗な寝顔がそんなことどうでもよくさせた。


しかもなんだか幸せそうに暢気な笑みを浮かべているし………、そんな寝顔にヒサノの緊張しきった頬が綻んだ。


この際、リンの根性が気に入らないとか薄情者とか、どうでもいい。




ヒサノの内ではリンへの好感度がぐんぐんと上昇していった。










「リン………っ…!」







無意識に彼女のベットへと腕を広げた。



彼女の大きな胸に飛び込もうと駆ける。

















………だが、何もない床で何故か足が滑った。

あと少しで彼女に届くのに……精一杯手を延ばした結果、ベットの端にぎりぎり腕を置くことができた。




リンがかけていたのだろうか……彼女の傍には丸まった毛布があった。


もう肌寒い時期なのに、彼女は毛布一枚すら被らずにその美肌を暗闇に晒している。

そんな時、やっぱりリンは寝ながらもくしゃみを一つ。


……寒そうだ。




先程の波瀾万丈も忘れて小さく笑みを零した。

丸まった毛布をかけてやろうと立ち上がり、手に取る。















…………手に、取った瞬間。

















…………見覚えのある赤が。


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