ゴッドネス・ティア
周りを見渡すと、隣には気持ち良さそうに寝息を起てるリンが横たわっていた。

その瞬間、……少年はみるみると青ざめる。





「待て、誤解だヒサノ。ほら、これ見て。ちゃーんと服だって着てるし。ちょっと昨夜はリンと話しこんじまってさ。な、俺とリンの間にはなーんにもやましいことなんか…」


「言い訳なんか聞きとうないわっ!!」


「――ぐはぁあッ!!」




懸命に弁解をしている途中、顎に鉄拳が突っ込んで来た。

情けない悲鳴をあげてまたもやベットに突っ伏す。

人の話は最後まで聞かないとイケマセンヨ。と説教しようと思ったが、見下ろすヒサノの眼光が予想以上に恐ろしいので大人しく正座でもしておくことにした。



ヒサノの方は未だに涙の大洪水だが、先程の幼児状態とは打って変わり、綺麗な碧い瞳に怒りを宿しているのは明らかだった。

怒りに満ちる瞳には怒り以外に、目の前で大人しく正座するレオナも映し出されている。


ギュッと握った拳は、白い肌が黄色くなる程だ。








「あんたは…っ…―――」


「いやいやー御乱心かなお嬢さん。泣いてるのもかわいいけど怒ってるのもなかなか良いねー」

















…………………。
















突如、この場に、二人以外の発言を許さないこの場に、明らかに不自然な声色が混入した。


水玉模様のパジャマに映える小麦色の手を、ポンッとヒサノの肩に置く。

いつのまにそこにいたのか、……ヒサノの背後には人懐っこい笑みを浮かべる男が立っていた。

その頬には何故か火傷のような跡、否、手形がくっきりと存在を主張している。



そんな男を瞳に映した瞬間、……ヒサノの小さな唇は大きく開かれた。


















「い、いやぁぁあああああっ!!!!!」





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