ゴッドネス・ティア
黒い。
黒い。
黒い。
………………黒い。
辺り一面黒だ。
黒、黒黒黒。黒の世界。否、真っ黒の部屋。
もうとうに朝日は昇っているというのに何故こんなに暗いのか、わかった気がする。
「部屋自体が黒くっちゃねぇ…気分も沈むわぁー」
またまた黒いソファに座り込む彼…クレストは、口も押さえず大きな大きな欠伸をした。
深い海色の瞳が涙で潤む。
昨日から眠っていない。眠る時間がなかった。
そんな可哀相な自分を哀れみながらまた、仕方ないか…と溜息をつく。
向かい合うように並ぶ二つのソファの真ん中には、珍しくガラスで作られた小さなテーブルが置いてある。
そして、クレストと向かい合うように座りまた、彼を鋭い眼光で睨みつけている少女。
「………溜息つくと幸せ逃げるんですよ。…それにここは貴方の家ではないんですから、そんな我が物顔でだらし無く座らないでください。欝陶しい」
「……心配してくれてるのかと思ったらそれかいヒサノちゃん」
「気安く名前を呼ばないでください変態。……私に、ディ……ディディディ………プ、き……す………したくせに!!!」
「言いたくなけりゃ言わなきゃいいのにぃー。かわいいねヒサノちゃん」
「……本当にやめてください。鳥肌が立ちましたよ」
何故か同じ部屋で、しかもたった二人で睨み合うことになっている。
それはほんの数十分前。
騒ぎを聞き付けたサロナとジョージが駆け付け、見知らぬ男クレストを見つけ、事情を聞いていた。
クレスト曰く、会いたい人がいるらしい。
それは魔女の村の住人でもなんでもなく、教会の使者達の中にいるはずらしい。
サロナとクレストは何やらよく解らないが親密な話となり、……あの疑い深そうなサロナがクレストと教会の使者との面会を許してくれた。
何故サロナが仕切っているのかは謎だが、ここは彼女の家だから仕方ないのか。