ゴッドネス・ティア
「…一本目」



張り詰めた空気に柔らかい少年の声が静かに響く。

見ると、アランが自慢げにピートを見下ろしていた。


ピートはそれに怒ることもなくただ呆然と立ち尽くしている。



「二本目」



ピートのことなどお構いなしでアランは次々と矢を射っていった。



「10本!!」



アランは外すことなく見事に全ての矢を的に射た。


元々細くてヒョロイ枯れ木だったのでアランの矢の威力に耐え切れず参りましたというように曲がり伏している。



「…ふうっ、おーっわり!」



汗を拭き取り、爽やかな笑顔でこちらに帰ってくる。


手まで振って輝かしい。


アランのその行動で緊張の糸がプツリと切れた。


ハアッ…


アランを除く全員が深い溜息をつく。



「僕の勝ちだねピート。
僕を認めてくれるんでしょ?
ヒサノとレオナが待ってるんだ、もう行くよ?」



汚れなきその微笑みで辺りをピンクに染める。



「か、かっこいい…」



ピートの後ろに隠れていた内気そうな女の子が顔を真っ赤に染めて呟いた。


その女の子の言葉に、ピートは爆発するのではないかというくらい赤くなった。


その表情は、怒りや恥ずかしさではなく悔しさ、というかんじだ。



「アラン!」



もう行こうかとアランが足を進めようとしたところでピートがそれを止めた。



「…またケチつけるの?」



呆れたように苦笑いをしながらピートを振り返る。


だが、ピートの表情は先程みたいに人を小ばかにしたようではなく真剣そのものだった。



「ち、ちげぇよ。
おまえ結構凄かったんだな。
あのキャティが赤面してるぜ」



見てみろ、とピートが指を差している所を見てみると、ピートの後ろに身を縮めている女の子の姿があった。


内気そうな顔を真っ赤に染めている。


りんごみたい。(もしくはトマト)



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