ゴッドネス・ティア
いきなりのヒサノのキャラ崩壊にショックをうけたみたいだ。

ポタポタと髪から垂れるココアを拭おうともせず、悲しそうにメソメソと顔を覆った。

本気で泣いているわけではなさそうなので、ヒサノは当然放置を決め込む。



「…………んで、ヒサノちゃんどーなのよ」



メソメソしていたはずのクレストが、突然また顔を上げた。

ヒサノのこめかみに青筋が浮かんだのは見間違えではないだろう。



「どうって………普通ですが」


「普通?普通って何?ヒサノちゃんの普通ってどれくらいの好きなわけ?」


「…………………ちょっと貴方黙れないんですか」


「だって俺、こういうの超気になるタイプ」



そう真顔で聞いてくるクレスト。

顔立ちはまあまあ整っている方なのに、顔がココアに濡れているのでどうしてもかっこいいとは思えない。

でも彼の深い海色の瞳だけはなんだか綺麗で、反らせないでいた。

好奇心旺盛な小さな子供が目を輝かせているみたいだ。

それがなんだか可笑しくて、ついクスリと笑ってしまった。


そうしたら、クレストは少し驚いて、微かだが目を大きくさせたように見えた。




「……やっぱりさ、女の子は怒ってんのも泣いてんのもいいけど、………笑ってんのが一番かわいいよなぁ」


ヒサノにつられるようにしてクレストもまた微笑んだ。
















――…だが、そのほのぼのとした空間も、ただ事ではない地響きによって打ち切られた。


いや、これは地響きではない。


何者かが荒々しい足音を建ててこちらに近付いているのだ。








「…………これはこれはー…」



何事か、とあたふたしているヒサノを放っておいて、何やら怪しい笑みを浮かべたクレストがゆっくりと立ち上がった。

その顔は……なんだか嬉しそうにも見えた。













そして、ドアが勢いよく開かれた。


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