ゴッドネス・ティア
それは狙い通り、けたたましい音を起てて開け放たれた。


開け放たれた、というより、蹴破られた、という方が正しいのかもしれない。

その相変わらず黒いドアは、それはそれはありえない程の凹みようで、……とりあえずいくらで弁償すればいいのかなかなとか考えたりした。


盾突けの悪くなったドアから姿を現した人物に目を細める。


背後のヒサノは恐怖でガタガタと震えていて、可哀相なのだがクレスト自身ではとても面白い光景だった。

ドアを開けた衝撃のせいで埃がちらほらと舞うなか、久しぶりだが見慣れた人物を、クレスト確かに瞳に映した。



相手は鋭い眼光をクレストに向けたまま動かないが、きっと全力疾走してきたのだろう、息が荒い。

その背後からバタバタと普通の足音を起てて…例の赤い奴がそいつを追って来た。



「なんで走るんだよ!しかもあんた目茶苦茶速ぇし!……………ちょ…な、なんだこれ!!テメッ、このドアどうすんだよ!どうやったらこんな凹み方になんだよ!あんた実はそんなに暴れん坊だったのか!」



哀れなドアを見た瞬間、少年レオナは血相を変えて喚き始めた。

だが目前に佇む当人はレオナの事などまるで無視だ。

眉間にシワを寄せ、鋭い眼光は緩む気配など無く、その鋭さは一層増しているようにも見える。

乱れて邪魔になる長い髪をかき上げ、忌ま忌ましげに舌打ちを一つ。


無視された上に舌打ちまで聞こえてしまったレオナは何故かショックだったらしく、少し眉を八の字にさせてもう口は開かなかった。

その場に嫌な沈静が訪れた。

















「………何故此処にいる」


ドアを蹴破ったまま何も言わなかった人物……スノーリアは重い沈静の中、そのズシンとくる唸るような声を辺りに響かせた。



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