ゴッドネス・ティア
その誰もが怯えて平伏してしまいそうな声色。

だが目前のクレストはビクリともせず、例の微笑みでスノーリアの問いに答えようと口を開いた。



「何故も何も、命令だからっスよ。命令じゃなけりゃ誰がこんな遠い所まで…」


「………命令…だと?」


「そうっスよ。ベル嬢直々の。じゃなきゃ従者の俺は今ベル嬢の護衛でもしてますよ」


「………チッ、…ベルめ。何を隠れてこそこそと……」














(…………話が読めない……)


ぶつくさと文句か何かを呟いているスノーリアの背後で、レオナは不思議そうに首を傾げていた。




(…スノーリアとクレストとかいう奴は知り合いなのか?…でもなんか険悪なムードだし…敵か?……いやでもなんか話し合ってるし…つかベルって誰………?)










………スノーリアの人間関係が全くわからない。


(……今更になって気付いた。俺、スノーリアの家柄や人間関係…恋人はいるのかとか…全然知らねぇや……)


彼に全く興味が無かったわけではないが、凄く興味があるわけでもないので今までそういう類の話は一切しなかった。


スノーリアは無口で無愛想だが、聞けば教えてこれただろうに。











「………ベルの命令だから、おまえは此処へ来たのか?わざわざ教会の使者を探し出してまで」


「そうっス。でもなかなか楽な仕事でしたよ」


「………ベルはどうした」


「ベル嬢は本家でお留守番っス。いろいろ忙しいみたいっスからねぇ。あ、お兄様の事心配しておられましたよ!」


「そういう付け加えはいい。……それでなんだ、我々、を探し出してまで伝えたい事とは」






『我々』そう言った時、チラリとスノーリアの視線はレオナを振り返った。

『我々』……ということは、教会の使者、レオナ達にも関係ある、ということだろうか。


ぽかんと口を開けるレオナへスノーリアと共に視線を移し、クレストはニヤリと怪しい笑みを浮かべた。



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