ゴッドネス・ティア
「まあ、それは後で話しますから……………そんなことより……」


「………ん?」



何か大事な話でもするのかと身構えていたら、クレストは一度息をつき、スノーリアを見据えた。


と思ったら、次の瞬間クレストの深い海色の瞳から涙の大洪水が今か今かと待ち構えていた。

まあまあ整った顔立ちをくしゃっとしぼめて、スノーリアへと大きく両腕を開く。





「坊っちゃーーーぁあんっ!!!」


「――…!?」



なんと、泣きべそクレストは、スノーリアの巨体へと飛び込んだのだ。

突然抱き着かれたスノーリアといえば忌ま忌ましげにクレストを見て、当然引きはがそうとする。



「何なんだ貴様は!抱き着くな腰に手を廻すな!!…き、貴様の鼻水が衣類に付着したではないか!………頬ずりをするなゲス!!!」


「嫌だーぁ!久しぶりなんですよ坊ちゃーぁん!何ヶ月ぶりだと思ってるんですかー!!坊ちゃんの匂いを忘れるとこだったじゃないですかー!!」


「そんな無駄な匂い忘れろ!……言ってるそばから匂うな気持ちの悪い!!」


「……あーやっぱりベル嬢と似てますね。顔だけでなく匂いもとなると血筋も恐ろし…グェッ!!」


「匂うな喋るな息するなっ!!!」



スノーリアの強力な足蹴りのより、クレストは鳩尾を押さえて崩れ落ちた。

スノーリアはまるで自分に纏わり付いた邪気を掃い終わったかのような清々しい安堵の息をつく。


乱闘後、背後のレオナはぱちくりと瞬きを繰り返していた。

そして疑問である一つの単語を口にする。









「………坊ちゃん…?」


「そ、そうなんだよレオナ君。リア坊ちゃんって呼んであげてね」


「貴様、まだ懲りないのか」



直ぐさま返されたクレストの返事。

目前で大きな拳を握るスノーリア。












「……スノーリアってどっかのお坊ちゃまなのか?」



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