ゴッドネス・ティア
「――…待って」
一つ息をついてクレストが話し出そうとした瞬間、彼の言葉より先に止めがかかった。
男か女かわからない、まだ幼い声色。
その声の聞こえる場所…部屋のドアの向こうへ皆視線を移す。
それを待っていたかのように、スノーリアによって半壊したドアは今にも取っ手が外れるんじゃないかと思う奇妙な金属音を響かせながら開いた。
そこに見たのは、……いつもと変わらないニコニコとした笑みを浮かべた男の子。
「……僕も仲間に入れてよぉ。最近皆に僕は忘れられてたみたいだけど、仲間ハズレは嫌だなぁ」
そう言いながら入室し、許可もなしに狭いレオナの隣に無理矢理座る。
レオナは苦笑いを浮かべて少しスノーリア側に寄った。
「アラン…、おまえなんか久しぶりだな」
「本当にね。誰かさんが三日も眠ってたせいで、みーんなその人に付きっきりなんだよー。僕暇で暇で仕方なかったなぁ」
「…………す、すんません…」
「別に。仕方ないからいいんじゃない?」
「…………」
ニコニコと笑みを浮かべながらのアラン。だがレオナとの間には冷たい風が吹き抜けていた。
その笑みにもいつもの無邪気さが感じられず、硬直した。
(…………アランが…冷たい…)
アランの機嫌をどこで損ねてしまったのか、とレオナは冷汗を拭いながら懸命に考えた。
「えーと…クレストさんでしたっけ?僕もそのお話聞きたいなぁ。僕も一応教会の使者に入ってることだし、……いいよね?」
青い顔で俯くレオナを無視し、アランは目の前のソファに座るクレストへ視線を移した。
大きな瞳を輝かせながら、甘えるように両手を合わせて「お願ーいっ!」とせがむ。
そんなアランにクレストはニコリと微笑み、小さく頷いた。
「もちろんだよアラン君…だっけ?本当は国王騎士達にも聞いて欲しいんだけど、彼女達がいたらなんだか大変なことになりそうだからねー」
「…大変なこと?」
「やっぱりね、……情報は本当に信じられる人に、そしてなるべく少人数に知らせておくのがいいんだ。………どこかにスパイか何かが潜んでいるかもしれないからね」