ゴッドネス・ティア
「さっきの店のおばちゃんに聞いたんだけど、えーと…あの例の地区はもっと向こうらしいぜ」


「………吉倉…か?」


「そうそう、それだよスノーリア」



実はこの街、国王騎士に聞けばあの華蓮の故郷らしく、華蓮が昔住んでいた地区の宿に泊まらせてもらおうという話になった。


華蓮は国王騎士から離れ、故郷である吉倉という地区に一人準備か何かで出向いているらしい。

ついでに案内でもしてくれれば良いのだが、そんなことを聞く前に華蓮は颯爽と消え去っていた。


というわけで今、レオナ達一行は迷子というものになっていたのだった。


スノーリアはスノーリアで意外と方向音痴だし、リンの野性の感とやらを聞いたらこんな人通りの多い場所に来てしまった。

そういうわけで、仕方なくレオナが一行の先頭をきっている。


その後ろで、苦々しい顔をした小さな少女が一人、溜息をついた。



「………煩い…」


「……そんな険しい顔すんなって。眉間にシワ残るぞ」


「…ふん。……こんな煩い所初めてだよ。ジョージがたくさんいるみたいだ」



そうやって部下の名前の出すのは、小さなかわいらしい少女…ではなく、実はこの一行の中で1番年上らしいかわいらしさのカケラもない魔女だった。

その色白の顔を歪ませて、彼女、サロナ・ダークはチッと一つ舌打ちを零す。


そんなサロナの部下は彼女とは真反対の癒し系。

彼女の部下、ジョージは今頃どうしているのだろうか。



「…ジョージ、元気かな」


「あれはいつでもどこでも、元気百倍ジョージ様だ」


「………なんだそれ」


「うちの村で通ってるジョージの別名だ。村には陰気な奴らが多いから馬鹿なあいつを見ると癒されるらしい。たまには馬鹿も役に立つもんだ」


「……………ジョージ」



あの癒し系のアホっぽい微笑みが…何も考えてなさそうな笑顔がレオナの脳内に広がった。

サロナのあの言いようは聞いていて可哀相だが、ジョージだから特に哀れんだりはしない。ジョージだから、彼はポジティブに今まで乗り越えてこれたのだろう。


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