ゴッドネス・ティア
適当に会話をしながら歩き続けていると、数分もしないうちに表通りに出た。

相変わらず人が多くて騒がしい。

しかし、何処か…他の地区と雰囲気が違う。

屋根は江戸州の州色の緑に統一され、賑やかで店が多いのは変わりないのだが。


所々にかけられた提灯や花飾りが、この地区の華やかさを象徴している。





「……姐さん、ここって…」


「ああ、ここは…吉倉や。ここなら表も裏も関係あらへん」



『吉倉』という地区名に、クレストはぎょっと目をひんむいた。

笑みが引き攣り、嫌な汗が流れた。



「……………吉倉って……あの?」


「あの…って…吉倉は吉倉やろ。あのもこのもあらへん」


「いやー…ちょっと気恥ずかしいっつーか…」


「…なんや、あんた意外と小さい男やなぁ。あんたならちょっと遊んで帰りそうやと思うてたのに」



意外やわー、面白そうにクスクスと笑う和葉にクレストは苦笑いしか出来ない。

吉倉は、クレスト自身あまり好きではなかった。

そういえば、国王騎士の誰かが…今日はここで泊まるとかいう話をしていたような気がする。

クレストは、それは絶対絶対絶対絶対反対だった。

坊ちゃんや自分はまだしも…あんな子供がこんな地区でなんか歩かせやしない。



「……そういえば、あんたは身売り女は嫌いやったっけ?」



道の端で立ったまま、会話を続ける。

人が多いせいか、座る場所がない。



「嫌い…?いや女はなんでも好きだぜ」


「そうやろうなぁ、あんたは」


「…けど、身売り女を買いたいとは思わねぇな」



道行く人々、その大半が男女二人組だったり、男の回りに女がベタベタ引っ付いていたり。

自分が女好きだというのは認めるが……どうもこの女の街は合わない。



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