ゴッドネス・ティア
「それじゃあ、何で辞めてしまったのですか?」



ヒサノがそう問うと少し悲しそうな笑みを浮かべた。



「…父上が死んだんだ、崖から落ちてね…。
それからずっとやってないよ」

「あっ…」



しまった!とヒサノは口を詰むんだ。


それに気付いたアランは明るく微笑む。



「いいよ気にしなくて、昔の事だしね。
…てかなんでこんな話になってんのぉ?暗い暗い〜!
こんなことはいいから早く出発しよう!
さっ、ヒサノ!最初の目的地は何処だっけ?
地図開いて!」

「あ、はい!」



アランの気に圧されて地図をすばやく開く。



「まずは『血の石』ですね。
ここから東に向かって、人間の国『ヒュネット』へ入り、王都『ラスカー』へ行きます。
ヒュネットは敵ですからもし私達が人間共にエルフだとばれたら即抹殺でしょう…。
さて、どうします?」

「………耳!!!」

「…は?」

「耳だよ、人間とエルフの違いは耳だけだろ?
耳を隠せっ!」



そう、人間とエルフの違いは耳の尖んがり様でしか判断できない。


血液判定でもすれば別だが。



「耳を隠せばばれないし、帽子か髪で隠せばいいだろ?」



レオナの余りの考えの単純さに二人は溜息をついた。



「そんな甘いもんじゃないでしょ?」



そのアランの言い方にレオナは少しムッと顔をしかめた。



「そんなこと考えてたら前に進めねぇーだろ?
そのことは旅にでてからヒサノの脳みそ使って考えろ!」

「私ですか…」



呆れたように頭を押さえるヒサノ。



「んじゃ、めんどくせぇけどまず東に向かって行くかぁ〜」

「とりあえずそうしよ!」

「そうですね、長旅にですねぇ〜」



そうして三人は村の門へ足を進めた。


門を潜る前に一度振り返る。


もしかしたら、もうここに帰る事はないかもしれない。


だが、三人はニッと笑って…



「……行ってきます」





そして、三人はパオーレを後にした。





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