ゴッドネス・ティア
「ほな、うちらも解散しましょか。私は当日に備えて準備でもしとくわー」
人々が行き交う中、二人はその流れに乗りながら、笑みを浮かべる。
そろそろお別れだ。
「ここが吉倉やからって遊びほうけるのはあかんからな、クレスト」
「…だから俺は身売り女は趣味じゃないんだってー」
「そんなんどうでもええわ。……あ、そういえばクレストに会う前に腹が減って団子を買うたんやった。あんたもお一つどうぞ」
「……………どうも」
時間が随分たってしまったからか、団子は既にもう冷たくなっていた。
そのまま少しひんやりした団子を口にほうり込む。
団子が刺さっていた棒は引き抜いて、その辺のゴミ捨て場に捨てた。
「ごっそーさん。じゃな、姐さん。坊ちゃんや国王騎士達に怪しまれるんで、俺はここで」
「そやな。また連絡するわ」
「…………また当日、な」
「…………任せぇな」
意味深なアイコンタクトを交わし、足速とクレストは身売り女の溢れる吉倉を後にした。
彼の特徴である、どんなに暑い時でも身につけている、彼の薄地のマフラーを翻して。
「…………クレスト、あんたは…まだ、迷っとるんか」
がやがやと、笑い声で賑わうこの道に、和葉の声がぽつり。混じって消えた。
彼女の表情は、いつものような穏やかな笑みはなく、もう見えなくなった彼の背中へ向けた哀れみ。
「………あんたは…全然…大丈夫なんかじゃないんやろう…。…あんたは…この裏世界が…嫌いなんやろう…。…………………彼女のところに、…本当は…行きたいんやろう?」
「……ええ加減、腹くくらんと、……自滅するで…?……クレスト…」