ゴッドネス・ティア
「………いえ、とくに何も」


「……そうですか。では、失礼致します」



睡蓮はそう言って笑みを浮かべ、鈴の音と共に踵を返した。





























「………ぶっはぁ!!なんだあれ!相変わらず嫌みっぽいな!!」



睡蓮が優雅に去って行った後、華蓮は滝のような汗を流しながら叫んだ。

どうやら華蓮は彼女のことが苦手らしい。

あー、くそー、とか言いながらじだんだする華蓮にそっと話し掛ける。



「……俺達本当にここに来てよかったのか?…つーかここお前の家?」


「……あー家っつーか、…オレが国王騎士になるまでここで世話んなってたんだ。オレの他にも大勢店の女達がいるから、十人くらい増えたって変わらねぇよ」


「……ふーん…確かに広いしな」



揉みくちゃにされながら店に放り込まれたのであまり周りを見ていなかった。見てみれば、なかなか広くて豪勢な飲み屋だ。



「華蓮ちゃんったら、少し見ないうちにまた逞しくなっちゃって…お姐さん達感動しちゃうわ!!」


「……そりゃ二年も帰ってなかったからな。少しは変わってねぇとおかしいし…」


「相変わらずかっこいいわ…素敵よ華蓮ちゃん…!その辺ほっつき歩いてる男なんかよりよっぽど素敵!!」


「………そ、そうかぁ…?」



お姐様方に大人気らしい華蓮ちゃん。褒めて褒めて褒めちぎられて、少しばかり照れていた。



「あ、そろそろ香月さん達のとこに行かないと。きっとまだ街の外の見張りをしているだろうから…」


「……え、国王騎士達外で見張りしてんの…?」


「おう。オレ達の任務はお前等の護衛だからな。とりあえず外で怪しい者がいないかだとか、見張ってんだ」


「…………俺達につかなくてもいいのか?」


「自分の身ぐらい自分で守れ」


「…………」








……なんだか言ってることとやってることがバラバラな気がする。



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