ゴッドネス・ティア
―――…ヒサノだけ。
渡された手鏡の中を見つめたまま、長らく頭の中にはその言葉が響き渡っていた。
着せてもらった着物も、簪に負けないくらいとても綺麗なものなのに、何故か簪の方が輝いて見えた。
「あ、そろそろ日が暮れるぜ。早く戻らないと意外と過保護なスノーリアが心配する」
そう言って、彼は自然にヒサノの手を取って前へ進んだ。
今度は迷子にならないように。
手が解けないように、強くもなく弱くもない力加減で、手を繋いだ。
道がまるでわかっているかのように迷いなくどんどんと先を行く彼。
そんな彼を、後ろからヒサノはぼうっとした顔で見ていた。
―――…だから、ヒサノだけ。
児玉する、彼の声。
そう言って笑った、彼の笑顔。
なんでだろう。
ちょっとだけ、特別視されただけなのに。
どうしてこんなにも…
「………顔が、熱い…」
そう呟いた声は、人込みに紛れて彼には届かず消えた。
熱い、熱い、熱いよ。
体中がほてって、心臓が脈打って、うるさい。
なんで、繋いでいる手が、私より大きいの?
なんで、そんなに温かいの?
なんで、そんなに、背中が大きいの?
なんで、なんで、なんで?
昔、手なんか数え切れない程繋いだはずなのに。
今、初めて繋いだような感覚になるのは、どうして?
どうして、私は手を離したくないの?
何故でしょうか。
私は何故、彼にもっと触れたい、と思っているのでしょうか。
渡された手鏡の中を見つめたまま、長らく頭の中にはその言葉が響き渡っていた。
着せてもらった着物も、簪に負けないくらいとても綺麗なものなのに、何故か簪の方が輝いて見えた。
「あ、そろそろ日が暮れるぜ。早く戻らないと意外と過保護なスノーリアが心配する」
そう言って、彼は自然にヒサノの手を取って前へ進んだ。
今度は迷子にならないように。
手が解けないように、強くもなく弱くもない力加減で、手を繋いだ。
道がまるでわかっているかのように迷いなくどんどんと先を行く彼。
そんな彼を、後ろからヒサノはぼうっとした顔で見ていた。
―――…だから、ヒサノだけ。
児玉する、彼の声。
そう言って笑った、彼の笑顔。
なんでだろう。
ちょっとだけ、特別視されただけなのに。
どうしてこんなにも…
「………顔が、熱い…」
そう呟いた声は、人込みに紛れて彼には届かず消えた。
熱い、熱い、熱いよ。
体中がほてって、心臓が脈打って、うるさい。
なんで、繋いでいる手が、私より大きいの?
なんで、そんなに温かいの?
なんで、そんなに、背中が大きいの?
なんで、なんで、なんで?
昔、手なんか数え切れない程繋いだはずなのに。
今、初めて繋いだような感覚になるのは、どうして?
どうして、私は手を離したくないの?
何故でしょうか。
私は何故、彼にもっと触れたい、と思っているのでしょうか。