ゴッドネス・ティア
相変わらず、人が多い。
日が傾いてきて、更に増えてきた。
ヒサノの手を引きながら、やっと見覚えのある道を見付けた。
――…その道を進んでいる時、事は起こった。
突然、カンカンカン!と、金属音が辺りに響き渡った。
「な、なんだ…?」
音の震源を見上げると、それは細長い簡素な建物からだった。
がたいの良い男が身を乗り出して、鉄板のようなものを必死に打ち鳴らしている。
レオナとヒサノにはそれがなんの合図なのか、全く解らなかった。
不思議に思って首を傾げているうちに、辺りの人々はどよめきだし、一斉に走り出した。
大量の人数が一気に走り出したものだから、人込みに流されそうになるのを避けながら小路に入る。
「襲撃ー!襲撃ー!」
一休みとしてヒサノを座らせた時、頭上から降ってきたのは、そんな言葉だった。
「……襲撃…?」
「どういうことでしょう…」
「……どういうことって」
必死に鳴らされる金属音。
張り詰めた緊張感。
勢いよく逃げ出す群集。
遠くから聞こえる悲鳴。
「……この街が襲われるってことだよ!」
「……きゃっ!!」
次の瞬間、レオナは走り出していた。
大通りは人が多すぎて危険だ。
ヒサノを引きずるようにして迷路のような小路をとにかく走った。