ゴッドネス・ティア
気付いた時には遅かった。彼女はいつの間にか、また目と鼻の先にいた。
香月の胸倉を掴み上げて、その恐ろしい表情を晒していた。
「…ふざけるな、人殺しめ…!」
そう、彼女は叫んだ。
人殺し、その言葉は昔よく聞いた。いつだったか、そうだ、戦争の時だ。
エルフと人間の、大戦争。終戦間近に参戦した、あの戦争。残酷な、戦争だ。
そんな言葉を、今更人間に聞かされるとは。
「人のことが言えるのか、人間」
「……」
「お前も私も国の戦士だ。人殺しなどと言われなくとも解っている。私も戦争や任務で何人もの敵を殺したからな。お前もそうだろう?人間よ」
「………違う」
「何が違う。自分のことは棚に上げるつもりか?」
「黙れっ!!」
彼女が叫んだ瞬間、左頬に重い衝撃を感じた。その衝撃は小柄な香月を冷たい地面へたたき付けた。
きっと平手ではなかった。容赦のかけらもない拳で殴ったに違いない。証拠に、口内がぱっくりと切れてる。血の味がした。
血を吐き出そうかと思ったが、その前にまた胸倉を掴み上げられた。
「あんたは、殺した。戦火の中、逃げ惑う人間達を。なんの関係もない村人を…」
「……」
「あたしの家族を…、お前が殺したんだ…!!」
いつの間にか馬乗りになっている彼女が、言った。
今度は右頬をまた盛大に殴られた。鉄の味は、相変わらず美味ではない。
家族なんて、戦争中なんだから死ぬ可能性だってある。しょうがないんだよ、戦争は、そんなものだ。そんなものなんだよ。兵士だって騎士だって命懸けで戦いに来るんだ。殺さなきゃ殺される。
そんなこと、当たり前だろう。
彼女は気の済むまで香月を殴った。いや、気の済むことなんてないと思うが、されるがままに殴られた。
何故だろうか。痛いのに。
香月の胸倉を掴み上げて、その恐ろしい表情を晒していた。
「…ふざけるな、人殺しめ…!」
そう、彼女は叫んだ。
人殺し、その言葉は昔よく聞いた。いつだったか、そうだ、戦争の時だ。
エルフと人間の、大戦争。終戦間近に参戦した、あの戦争。残酷な、戦争だ。
そんな言葉を、今更人間に聞かされるとは。
「人のことが言えるのか、人間」
「……」
「お前も私も国の戦士だ。人殺しなどと言われなくとも解っている。私も戦争や任務で何人もの敵を殺したからな。お前もそうだろう?人間よ」
「………違う」
「何が違う。自分のことは棚に上げるつもりか?」
「黙れっ!!」
彼女が叫んだ瞬間、左頬に重い衝撃を感じた。その衝撃は小柄な香月を冷たい地面へたたき付けた。
きっと平手ではなかった。容赦のかけらもない拳で殴ったに違いない。証拠に、口内がぱっくりと切れてる。血の味がした。
血を吐き出そうかと思ったが、その前にまた胸倉を掴み上げられた。
「あんたは、殺した。戦火の中、逃げ惑う人間達を。なんの関係もない村人を…」
「……」
「あたしの家族を…、お前が殺したんだ…!!」
いつの間にか馬乗りになっている彼女が、言った。
今度は右頬をまた盛大に殴られた。鉄の味は、相変わらず美味ではない。
家族なんて、戦争中なんだから死ぬ可能性だってある。しょうがないんだよ、戦争は、そんなものだ。そんなものなんだよ。兵士だって騎士だって命懸けで戦いに来るんだ。殺さなきゃ殺される。
そんなこと、当たり前だろう。
彼女は気の済むまで香月を殴った。いや、気の済むことなんてないと思うが、されるがままに殴られた。
何故だろうか。痛いのに。