ゴッドネス・ティア
落としてしまった相棒を拾おうとしても、うまく腕が動かない。
全身が震え出して、うまく動かせない。
ブルブルと小刻みに震える両手を見下ろした。こんなにも自分の掌は小さかっただろうか。
日々鍛えぬいてきた証の荳や切り傷が、今はどうしようもなく小さな物に見えてならない。
そうだ、この手で、私は…
震える両手で顔を覆った。その瞬間、突然の激痛に顔を歪めた。情けない小さな悲鳴が喉の奥から漏れる。
その激痛は、なんの防具もしていない足からだった。その左足から、裂けるような痛みを感じた。
身の危険を感じ、痛みを噛み締めながらその場から跳び退くと、また更に裂けるような痛みは増した。
「あ、はは…やっと思い出したか藍 香月!…これで念願の恨みが晴らせるよ…!」
更に顔を歪ませて立ち上がったナミ・ダコスに、あの少女の面影はなかった。
憎しみ、恨み、怒り、とは人をここまで変えてしまうのだろうか。
曇り空へ高らかな笑い声を響かす彼女は、どこかとても恐ろしかった。
きっとこの痛みは彼女の持つ頑丈な槍に貫かれたことにより生じたものだろう。
ドクドクと脈打つ傷口から、生暖かい液体が団服を濡らすのを感じた。
傷は思っているよりも、きっと深い。思わず舌打ちをしてしまう自分がいた。
相棒の槍は、もう届かない場所にある。念のため装備してある短剣を太腿の小さなポケットから抜き取った。
「……傷心に…浸っている場合ではないな…」
こんな時に、あんな苦々しい思い出が蘇ってくるとは、なんともやりづらい。自分達にとってもあの戦争はいい出来事ではなかったというのに。
しかし、幸か不幸か先程の激痛のおかげで冷静になることが出来た。
全身が震え出して、うまく動かせない。
ブルブルと小刻みに震える両手を見下ろした。こんなにも自分の掌は小さかっただろうか。
日々鍛えぬいてきた証の荳や切り傷が、今はどうしようもなく小さな物に見えてならない。
そうだ、この手で、私は…
震える両手で顔を覆った。その瞬間、突然の激痛に顔を歪めた。情けない小さな悲鳴が喉の奥から漏れる。
その激痛は、なんの防具もしていない足からだった。その左足から、裂けるような痛みを感じた。
身の危険を感じ、痛みを噛み締めながらその場から跳び退くと、また更に裂けるような痛みは増した。
「あ、はは…やっと思い出したか藍 香月!…これで念願の恨みが晴らせるよ…!」
更に顔を歪ませて立ち上がったナミ・ダコスに、あの少女の面影はなかった。
憎しみ、恨み、怒り、とは人をここまで変えてしまうのだろうか。
曇り空へ高らかな笑い声を響かす彼女は、どこかとても恐ろしかった。
きっとこの痛みは彼女の持つ頑丈な槍に貫かれたことにより生じたものだろう。
ドクドクと脈打つ傷口から、生暖かい液体が団服を濡らすのを感じた。
傷は思っているよりも、きっと深い。思わず舌打ちをしてしまう自分がいた。
相棒の槍は、もう届かない場所にある。念のため装備してある短剣を太腿の小さなポケットから抜き取った。
「……傷心に…浸っている場合ではないな…」
こんな時に、あんな苦々しい思い出が蘇ってくるとは、なんともやりづらい。自分達にとってもあの戦争はいい出来事ではなかったというのに。
しかし、幸か不幸か先程の激痛のおかげで冷静になることが出来た。