ゴッドネス・ティア
とにかく、今はふざけている場合ではないのだ、うん。



「とにかくさ、真っ直ぐ進もうぜ。俺、今自分がどこにいんのかわかってねーし。走り続けたらどっかに出口があるって」


「わかってなくて走ってたんですか!?……まあとにかく走るしかないのでしょうけど…」



この小路にはまったくもって人がいない。大通りを大分逸れてしまったためか、人の声も全くしない。

何が起きているかあまり理解出来ないが、とにかくとんでもない騒ぎだということだけはわかる。

とにかく、街の外へ逃げないと。



「アランやスノーリアさん達は大丈夫なんでしょうか…」


「アランはスノーリアが守ってくれるから大丈夫だと思う。問題はサロナとリンだな。あいつらちゃんと生きてんのかな?」


「ちょ、物騒なこと言わないでくださいよ!縁起でもない!」


「でもなーサロナはともかく特にリンは……」



と、あのへらへらした彼女の名を口に出した。

だが、それは向こう側からやってくる人物によって、レオナの口はゆっくりと閉じられた。

不審に思ったヒサノが首を傾げてレオナの視線を追うと、目の前の人物に目を見開いた。



「………リン…?」



そうヒサノに尋ねられ、やっと彼女はこちらに気付いて顔を上げた。

だが、いつものへらへらしている彼女とはどこか違う。逃げてきたのか、微かに息が乱れていた。



「リンよかった…!ちゃんと逃げ…」


「――…アンタ等ちんたら何やってんだ馬鹿!!」



いつもへらへらしているはずの彼女は、そう怒鳴った。

見たことのない怖い顔をして、二人に向かって怒鳴ったのだ。



「今何が起こってんのかわかってんのか!?とにかく走れ!!」


「え、え、リン…?」


「いいから早く!」



何をそんなに焦っているのか。いや、焦らないといけない状況なのはわかっているのだが。

彼女は何があってもへらへらとしていたから、つい今回もそうなんだろうと思っていたのに。



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