ゴッドネス・ティア
リンに急かされ、戸惑いながらも走り出した。

リンの表情には、怒りのような怯えのような焦りのような…そんな感情がかいま見えた。



「おいリン…お前サロナと出掛けてなかったっけ?」


「そ、そうですよ!スノーリアさんやアランも…」


「あの魔女様なら大丈夫だよ。アタシ達はアンタ等を探してたの」


「………マジかい」


「兄さんも無事。ボクは兄さんが連れて逃げたよ」


「本当ですか!よかったぁ…」


「……けど国王騎士はそうも言ってらんないかな」


「……もしかして……国王騎士達…襲撃してきた奴等と戦ってんの?」


「…つか、その襲撃してきた奴等が国王騎士なんだよね」


「………は?」



襲撃してきた奴等が国王騎士?なんだそれ、国王騎士達は賊か何かと戦っているんじゃないのか。

そう問おうとすると、…走っているレオナの前が急に暗くなった。

不思議に思った瞬間、衝撃が走った。

悲鳴を上げる程痛くはないが、かなりのスピードで走っていたので、不様にも勢いよく尻餅をついた。

いったい何なんだもう。踏んだり蹴ったりじゃないか。




「いってーな…おい坊主…」



勢いよく打ち付けた尻を摩っていると、頭上から凄みのある声がした。

もしや、と思って恐る恐る顔を上げると、大柄ないかにも柄の悪そうな兄ちゃんがレオナを見下ろしていた。



「よぅ坊主…そんなに急いでどうしたよぉ?ああん?」



よく見れば、レオナを見下ろしている男意外にも数人の柄の悪そうな兄ちゃん達がいた。

これは、もしかして、大ピンチだったりするんだろうか。

レオナは一気に体温が低くなった気がした。



「……ちっ…アンタ何やってんだよ馬鹿…っ」



未だに座り込んでいたレオナを引っ張り起こし、耳元でリンは悪態をついた。

今回はあの鈍いヒサノさえもこの奇妙な雰囲気を感じているらしく、レオナとリンの背後で見るからに青ざめていた。



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