ゴッドネス・ティア
「……じゃあ俺達は逃げるんで、行きますね…」



そう言ってリンとヒサノを引っ張り、数人の男達の間をくぐり抜けようとした。

だが、レオナの肩は強い力で引かれ、止められた。



「……ちょっとそれはないんじゃねーの坊主。俺達この襲撃に邪魔されちゃってよー、溜まってんだわ」


「………」



それは、どういう意味なのか。

振り返ると、ニヤニヤとした気持ち悪い笑みを浮かべた男達がいた。



「坊主はいらねーや。そっちの女二人渡してくれたら、痛いことはしないぜ?」



そう言って、指を鳴らす。

嘘つけ。リンとヒサノを受け取ったら、俺を殺すつもりのくせに。

それはそうだ。証拠は絶っていないと。言いくるめて安心させたところで殺る気なのは見え見えだった。


これは、危機的状況だ。自分も含めて、リンやヒサノの。

ぎゅっ、とヒサノの手を握っている右手が、震えた。

いや、きっと震えているのは彼女だ。怖いのだ。心身共に震え上がっているに違いない。

これは自分の蒔いた種だ。俺が回収しないと。



「おい、坊主。無視はいけねーぞ。おい…」


「―――…ん…ぇ…」


「…ああ?…なんだって?」



ボソリと呟いたレオナに耳を近付け、聞き直してきた兄ちゃんAを思いきり睨んでやった。



「――…ふざけんじゃねぇよバーーカっ!!」



次の瞬間には走り出していた。二人の手をしっかりの握って。

走り出す前には、しっかりと兄ちゃんAの顔をぶん殴ってやった。

相当強く殴ったためか、白目を剥いてダウンした兄ちゃんAを見て呆然とする兄ちゃんA、B、C、Dやらをかい潜って、走り出していた。

ヒサノがこけそうになるのも無視して、とにかく全力で走っていた。




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