ゴッドネス・ティア
「ど、どうしたんですか?
具合でも悪いんですか?」



体を震わせているアンを心配そうに見上げ、背中をさすってやろうと肩に手をのせたが、その瞬間アンは我にかえったように顔を上げ、勢いよく地面に伏した。



「も、申し訳ございません!!」



アンがヒサノに向け、土下座をしたまま震える声で言い放つ。

頭を下げられている当のヒサノはギョッと目を剥きいた。



「……はい?」



三人共不思議そうに首を傾げる。

アンの肩にのせていたヒサノの手は行き場のない手となった。



「わ、私は巫女様になんてことを!
これまでのご無礼をお許し下さい!」



ご無礼な事なんかしたっけ?と、ヒサノは首を傾げる。だが、思いあたるふしが特にない。



「まってアンさん、意味がわかりません。
どうしてあなたが私に謝るんですか?」


「す、すみません…」



答えになっていない。


肩が小刻みに震え、ヒサノにおびえているのがわかる。


先程から謝ってばかりだ。



「アンさん、謝ってるだけじゃ解りません。
顔を上げてください。」



風にサワサワと揺れる柔らかい草原に腰をおろすヒサノ。



「は、はい…」



恐る恐るアンは顔を上げた。

だが、ヒサノと目を合わせようとしない。


それに少々困りながらもでアンに笑いかけた。



「で、どうして私なんかに頭を下げているのですか?」


「あ、あなた様が…み、み巫女様だからです…」



声までも震わせ、顔が前よりさらに青いアンの放った言葉。
その言葉に又しても首を傾げた。



「え、巫女だから頭を下げるのですか…?」


「え…、これが普通ですよ?
巫女様は大臣とならぶ地位の持ち主。
最高位となればそれ以上にもなれるお方…。
何故、そんなお方がこんな城下へ?」



アンが首を傾げてヒサノを見上げると、やっと目が合った事にヒサノはホッと胸を撫で下ろした。



「へぇ、巫女ってそんな凄い地位だったんですね…」



小声でレオナに話しかけると、レオナは呆れたように溜息をついた。



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