ゴッドネス・ティア
「むぎゅっ!な、なんべふか、びきにゃり!」



なんて言っているのは不明だが、ジダバタと抵抗するヒサノ。



「ヒサノ、ちょい耳かせ」



レオナは遠慮なくヒサノの耳を引っ張る。



「ぁいだだだだだだだだだっ!!」



「わっ、ごめん…」



ヒサノの悲鳴に気付いて即座に手を離した。



「で、…なんですか?」



ふぅっと息を整えて話を再開する。



「許すとか簡単に言うな。
こういうのは絶好のチャンスだ。
血の石がどこにあるか聞け。答えたら許してやる、て、言っとけ」



声をひそめて耳打ちする。



「ええ?!でもそれじゃ卑怯じゃないですか?!
しかも血の石は教会にあるってファン様言ってたじゃないですか!」



「その教会の場所とか状況とかわかんねぇだろ?
それを教えてくれたら許すって言っとけ」



「わ、わかりました…」



レオナに説得されたヒサノはアンに向き直り引き攣り笑顔でいった。



「では、あの…、私の質問に答えられたら許します」



そう言われたアンは目をパチクリと瞬き、不安そうに頷いた。



「…血の石を、知っていますか?」



「…血の石ですか?」



アンは首を捻った。


そして思い出したようにポンッと手を合わせる。



「知ってます!
あのメルス・バンクロフトの血の石ですよね?
知ってますよ!
で、その石がどうかしたんですか?」



「えっ…!」



「観光ですか?
有名ですもんね、血の石!」



どうやらアンはレオナ達を旅行者だと思っているらしい。


それはそれで好都合だ。


本当の事なんて言えるわけがない。


血の石を盗みに来ました、なんて。


「アハハ、そうなんですよ。
なんか観光したい気分だったんで…」



うまくごまかそうと作り笑いを浮かべるヒサノ。


その笑顔は引き攣っているを通り越して乾き切っている。



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