ゴッドネス・ティア
「あ、でも教会には入れませんよ」



そう言ったアンの顔が悪魔に見えた。



「え…?観光できないんですか?!」


「はい…、許可を貰ったら入れるかもしれませんが…手続きが大変みたいで…、あと身分証明書とかも必要みたいです」


「……み、身分証明書……」



そんなことをしたら、自分達がエルフだということがばれてしまう。

今は深く帽子を被っているから耳は大丈夫だが、血液鑑定でもされたら終わりだ。



「なんで…なんでそんなにめんどくさいんですかっ」


「なんでっと言われましても…
血の石がある教会自体が貴重なんでいつも警備員が見張っているほどですし……」



揺さぶられさがら、早口で答えるアン。


事実を知ったヒサノは開いた口が塞がらない。



「そ、そんなぁ…」



そのままヘナヘナと座り込んだ。


口から魂が出る、とはこういう事なのだろうか。



「まじかよ…、特別に観光出来る日とかってねぇの?」



こちらもやや脱力気味だがまだ諦めない、とレオナは聞いた。



「と、特別ですか?
うーん………」



指を唇にあてて首を捻る。


しばらくそうしているとアンはいきなり顔を真っ赤に染めた。


その展開が意味不明でレオナは眉を寄せる。


ヒサノは相変わらず放心状態だ。



「あ、あの…一応ありますよ…観光じゃないですけど…」



「え?!」



先程まで抜け殻だったヒサノが聞き付けて甲高い声をあげる。


レオナは瞬時に耳を塞いだ。



「別に観光じゃなくてもいいんで!
一目見れたら大丈夫なんでっ!!」



アンの答えをせかすように両手をブンブン回す。


危うくあたりそうになったレオナは顔をしかめた。



「で、いつ?」



軽く不機嫌でレオナは聞いた。


ヒサノも頷く。



「あ、明後日です…」



アンは何故かまた顔を真っ赤に染めて俯いた。



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