ゴッドネス・ティア
「がっ…………っ!」



他人から見なくても悪役に見えるな、とヒサノは小さく頷いた。



「レオナ、痛そうですよ…?」



フードの悲痛な声にヒサノもつられて顔を歪ませる。



「な、レオナだと?!」



フードがいきなり声をあげた。


初めてまとも聞いたフードの声はしゃがれ声で、健康ではなさそうなかんじだ。



「び、びびったぁー、なんだよ、いきなり大声だすなよ。
何?俺の名前が変?女みたいで変だってことは自覚してるやい!」



「…いや、おまえレオナといったな…?
バンクロフト教会から来たのか?」



「?!」



ヒサノがピクリと眉をつり上げる。


レオナも不機嫌極まりない顔でフードを見据える。


なんでこのフードがそんなこと知ってんだ?



「やっと、会えた…」



「…は?」



意味不明な言葉を口走るとフードが軽々とレオナを押し退けた。



「ぅわっ…?!」



危うく転びそうになる。


すると、男は服の中から何かを取り出した。


ためらいもなくレオナに渡す。


レオナは少しためらって、警戒しながら受け取る。



「…!?これは!?」



「なんですか?
なんなんですかぁーー?」



後ろから覗き込むヒサノ。



「血の石だ。おまえ等にやる」



フードを被っていて顔は見えないが、笑んでいる口元だけは見えた。



「え、いいのか?そんなあっさりと?!」



「あぁ、俺は元々おまえ等に渡すために来たのだから…」



先程の一乱でれたフードを深く被り、息をつく。



「…仲間なのか?」



「…いや、正しくは敵だな。
俺はどちらでもいいが…」



そう言うと、一つまた息をつき、フードはフードと呼べなくなった。


フードをとったのだ。



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