クマのぬいぐるみ
どうやら騒動の正体は引っ越しだったようだ。しかし、今時の都会人にしては挨拶回りなんて珍しい。地方から上京してきたのだろうか。俺は錆び付いたドアのぶに手をかけ重い扉を開いた。
「どうも初めまして。今日隣に引っ越ししてきました。澤田暁子と言います。私独り暮しって初めてで隣近所の人と早く打ち解けて淋しさ紛らわそうかと思って…。朝早くから迷惑かけてすいません。よろしくお願いします。」
俺はしばらく茫然とその場に立ち尽くした。その無言のわずかな時間が何分、何時間にも感じられた。
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