クマのぬいぐるみ
俺は彼女の挨拶にも驚いたが、何よりもその可憐な美貌に心ひかれた。初めて会った気がしないような親近感と愛嬌。続いて込み上げてくる期待と緊張感。俺の部屋の空気を浄化するような香水の香り。彼女が不思議そうに見つめてくるようだが、どうやら俺は返事をするのに遅れていたようだ。
「あの…どうかされ―」
「あ…いや、あぁゴメンゴメン。こんな丁寧に挨拶してくる人なんて珍しくて…。しかもここ最近俺の家に人が尋ねて来るなんてなかなかなかったからさ。」
俺は慌てて返答したが、その慌て方。その慌て方を後々思えば鏡で見たかった。
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