悪魔に優しいくちづけを
とりあえず、押し倒していい?
彼の前世はトマト農家のおじさんだと思っていた。
いや、むしろトマトだ。
できることならいつまでもトマトとして生きていたかったけれど、願いも虚しく人間、あるいは動物においしく食されてしまった、いちトマト。
だってね、私、こいつ以外に見たことがないのよ。
――1日にトマトジュースを8リットルも飲む人。
「……えっと、今、なんて?」
スプーンにすくったかぼちゃプリンをあやうく落としそうになって、寸でのところでそれを阻止する。
そんな私の問いに、目の前でグラスのトマトジュースを啜りながら、千歳(ちとせ)はふわふわと笑ってみせた。
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