悪魔に優しいくちづけを
「……えっと、頭、大丈夫?」
「いたって良好だよ」
それはよかった。
「千歳、吸血鬼なの?」
「そうだよ」
「人の血、吸うの?」
「うん。今日から吸えるようになるんだ」
「……そっか」
うーん、どこをどう突っ込めばいいのだろう。
むしろ、これは迂闊に突っ込んではいけないような気がする。
千歳は真面目に話しているようだし。心なしか嬉しそうだし。
リアクションに困り、スプーンをくわえて黙り込む。
そんな私の気を知ってか知らずか、千歳は本日5杯目のトマトジュースのグラスを置き、ローテーブルの反対側に座る私の元へにじり寄ってきた。
「ねえ、葉月」
「なに?」
「とりあえず、押し倒してもいい?」