悪魔に優しいくちづけを
 


言うが早いか、動くが早いか。

気づけば、私はカーペットに縫い付けられるように押し倒されていて。

スプーンがテーブルの上を跳ねる軽快な音の中で、視界いっぱいを、彫刻のように綺麗な千歳の顔で覆われていた。


「はづき、」
「……はい」
「誕生日プレゼント、葉月の血をちょうだい」

「……へ?」

鼻と鼻がくっつきそうなほどの至近距離。
こんなときでも、千歳の声は穏やかで、のんびりとしている。


「いちばん最初は、好きなひとの血がいいんだって」


ちゅ、と額に小さくキスを落とされて。

首筋にゆっくり頭を埋められ、そこに熱が触れてきたとき。
びくりと身体が跳ね上がった。


 
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