悪魔に優しいくちづけを
「ま、ままま待って!」
今の状況がまったく掴めず、精一杯の力を込めて千歳の頭を押し返す。
それでも彼は私の首に舌を這わせ続け、ぞくぞくとした何かが私の脳を侵食していく。
なにこれ。
怖い。
こわい、千歳。
「――わっ、葉月ごめん!」
首元の熱が離れていく感覚に、閉じていた目を開くと。
整った顔に焦りの色を浮かべた千歳が、あわあわと私の目元を指で擦ってきた。
「いきなり怖かったよね、ごめんね。泣かないで」
そして慰めるように、ぎゅうっと優しく抱きしめてくる。
私はいつの間にか、泣いてしまっていたらしい。