悪魔に優しいくちづけを
 


ゆるゆると背中をさすってくれる千歳の胸に頬を寄せ、ほっと息をつく。


……あ、鼓動がはやい。

千歳、緊張してる。


のんびりしているくせに、こんなときは心臓をバクンバクンいわせちゃって。
そんな彼がなんだか可笑しくて、つい口元が緩んだ。


「千歳、本当に吸血鬼なの?」
「うん、ほんとう」
「吸血鬼って、昼間は出歩けないんじゃなかったっけ」

「大昔はね。今は大丈夫。……でもやっぱり、日光はちょっと苦手だけど」


ああ、そうか。
言われてみれば確かに。

千歳はいつも、晴れた日よりも雨の日の方が元気がいい。日が暮れれば尚更。

朝が弱いのはただの低血圧のせいだと思っていたけれど、違ったんだ。


 
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